あまりの雪のなさに現地にたどり着いた時には愕然とした。
しっかりと雪を踏む締めて、アイゼンで蹴り上げて、ピッケルを深く突き刺し自分の身を支え、一歩一歩確実に弥山に近づく。
そんな山になるだろうと覚悟していた。
もしくは蒼天の下に輝く雪の積もった大山を登れることを期待し、
しっかりと装備を携えて大山に臨んだ。
だが、事態はそんな予想とは180度違う結末となった。
天気予報は快晴で気温も高く、汗だくで登ることになるだろうと
覚悟して登った一の沢稜線は、ガスと突風で立つこともままならず、
人の到来を拒む閉ざされた大きな関門となっていた。
桝水 |
②行先:大山 一の沢
③メンバー:Ys,Y,E,Ym(記)
④行動記録:桝水高原スキー場(7:00) → 一ノ沢稜線直下(8:30) → 一の沢稜線(9:30) → 一の沢稜線上、撤退を決意(10:30) → 一の沢稜線直下(12:00) → 桝水高原スキー場(14:00)
⑤行動概要
6:30。集合場所に着いた時にはメンバーが全員臨戦態勢だった。
天気予報が快晴。
気温も高い。
蒼天の下を気持ちよく山に登れる。
そう心躍らせ、各々がそそくさと登る準備を整える。
高速の上から見えた大山は心なしか山頂付近に雲がかかっているように見えたが、
登っていたらいずれ流れていくだろう。
自分自身もそう思い、興奮しながら準備を整えた。
桝水 |
環状道路に入って驚いた。
辺りに雪がない。
すでに残雪期を通り越し、春の訪れを感じさせる息吹がそこにはあった。
今年の厳冬期は短かった。
2017年3月の桝水と比べたら明らかに雪が少ない。
落胆するもまた違う世界があると自らを奮い起こし歩みを進めた。、
登るにつれて少しずつ雪が増えていき、一の沢入口に入ると踏みしめるほどには雪があった。
あまり気にせず、稜線直下を目指す。
高速から見えた雲はここいらから濃度を増し、
天気予報とは裏腹に自分たちの視界を奪った。
辺りはなにも見えない。
白の気配が辺りを覆う。
藪をかわす |
一の沢稜線に到着する。
この時期、雪の下にいる藪たちがもう姿を現していた。
一歩一歩踏みしめて、弥山を目指す。
本来であれば快晴の下、気持ちの良い雪山登山になるであろうと
今回参加したメンバーは誰しも期待していただろう。
しかし事態はそう簡単にはいかなかった。
稜線に出てから、気温は一気に下がった。
凍てつく風が体温を奪っていく。
空は完全にガスに覆われ、太陽の光は一切届いてこない。
あたりには突風が吹き荒れ、立っていることも困難な状態だった。
ピッケルを雪に突き立て、姿勢を低くし、なるべく風の抵抗を少なくしようと
山にしがみついてみたが、事態はまったく好転しそうになかった。
こんなに厳しい大山は自分にとっては初めてだった。
凍ったイワカガミ |
雪はほとんどなくなり、代わりに凍った土が姿を現した。
辺りではイワカガミたちが固まった大地が溶けるのを
ひたすら待ち望んでいた。
嵐はこれ以上の侵入を阻もうと自分たちの眼前で吹き荒れているその時だった。
Yが決断した。
一の沢 撤退 |
賢明な判断だと、誰もが思ったことだろう。
吹き荒れる風の中、視界もゼロの状態でこれ以上歩みを進めるべきではない。
よいことはない。
ゆっくり大地を踏みしめて一歩一歩下山を開始した。
降り出したらあとは早かった。
一ノ沢稜線直下に向かってただ、下るだけだった。
不思議と下山を開始したらガスが晴れる。
いつものことなのだろう。
それでも、皆で帰ると決めた。
決めて帰った。
途中で昼食を済ませ、大きな問題もなく14:00には全員が下山ができていた。
長く山にいたわけではないが、とても消耗した山になった。
天気予報、山においては本当にあてにならない。
毎週のように大山に通い、どこかに登っている自分だったが、
今シーズンで一番疲れた山行はもしかしたらこの日の一の沢であったのかもしれない。
実りの多い山行となった。
一つずつ、大山のスキー場が雪がないために閉鎖をしていっている。
今シーズンの雪山大山はぼちぼち終わるのだろう。
暖かくなった季節の、暖かくなった大山を想いながら、
明日、また登る稜線を夢見て、
胸を躍らせながら今日も筆を置く。
記録寄稿:Ym
薄くなった雪がへばりつく沢筋は雪崩の恐れが無いかわりに落石がビュンビュンと…。避けて稜線に上がれば藪。前回は左斜面をジグザグに登ったけれど、イワカガミやらが露出しているから踏むわけにはいかない。境目を直登の我々を西風が叩き落そうとする。二回飛ばされました。
返信削除Ys
返信削除一緒に行く山は確かに修行傾向にありますね、何年か前に行った吾妻山も雨でしたし親指も大変でしたし今回も大荒れでした。でも山はやめられませんね。
飛ばされなくてよかった。
また、行きましょ。
Ym